前回のコラムでは、クッション言葉で伝える柔らかな表現についてお話いたしました。
今回は、敬意の伝わる動作・所作についてお話させていただきます。
言葉に敬語があるように、動作や所作にも敬意を伝える表現方法があります。 敬意を伝える動作や所作とは、自分自身の動きやすさを優先した動きではなく、相手の感情や動きやすさを第一に考えた動作や所作のことで、例えば物を人に手渡す場合、相手が取りやすい位置、取った後にすぐ使える形で、両手で差し出すと相手に対して親切ですね。
本などを手渡す場合、相手がすぐに読めるように相手の方向に向けて、丁寧に両手で渡します。 自分自身の動きを優先して考えると、方向を変えずにそのまま、片手で差し出すほうが手間がかかりません。
けれど、そのような渡し方では、相手が受け取った後に方向をかえなければ、読むことができませんね。
また、片手での動作は、横柄な印象を相手に与えます。方向を変え、両手で手渡すことで、相手への配慮や敬意を示すことができます。
日常の中では、物を手渡すシーンが多くありませんか。その時に、相手が手にした後の動きを配慮して手渡すことが大切です。
本や書類はすぐに見ることができるように、ペンや傘はすぐに使えるように、コートや上着はすぐに着ることができるようにと考えると、自ずとどのように手渡せば良いのかがわかってきますね。
また、立ち位置や視線にも配慮が必要です。相手を見下ろしていないか、相手に圧迫感を与えていないかなどです。
接遇の場では、前傾姿勢、しゃがみこみやひざつきで、できるだけ相手より視線を下にします。
同じ言葉をかける際でも、どの位置から話しかけるのかで相手に対する印象が大きく異なるからです。 同様におじぎも、首だけ曲がるペコペコおじぎでは、相手に敬意が伝わりません。背筋を伸ばし、しっかり腰から曲げ、状況に合わせて、会釈(15度)、敬礼(30度)、最敬礼(45度)を使い分けることで敬意が伝わります。
言葉では丁寧にお話できていても、動作や所作で敬意を表すことができていなければ、相手に的確に敬意や配慮が伝わりませんので注意してください。
相手に対する細やかな心配りを動作や所作に表すことも、人付き合いでは大切なマナーですね。
ほっかいどう福祉だより「しあわせ」 2014.Autumn Vol.100 掲載