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学生の就職活動におけるマナーの重要性について
H27年12月4日(金)
講師:トータルマナー株式会社 代表取締役 田野直美
私どもへマナーの授業をご依頼くださっている 専門学校様が主催する「企業セミナー」にて 就職活動中の学生さんの保護者会が同時に開催されました。
その際、保護者の方向けに講演のご依頼をいただきました。
今回、多くの方に知っていただきお役立ちいただければと思い、 その要旨をご紹介いたします。
マナーとは一体何か。
皆さん堅苦しいというイメージをお持ちではないでしょうか。
そうではなくて、私は普段何気ない形で自己表現する、 一番大切な手段だと思っております。
実は私は企業様を全国、北海道から沖縄まで、 マナー教育を担当しておりまして、 今、こういう子が欲しい、という求人側の声もいっぱい聞いています。
それは「コミュニケーションのできる子が欲しい」 ある企業さんが、「面接で男の子も女の子も笑顔の出る子を採ってるんですよ」 とおっしゃるので「えっ?」と思ったのです。
男の子には、「元気良くね!」「パワーやバイタリティがあるように!」 「自己紹介の時から元気にしないと第一印象大事よ!」といつも指導してきました。
ですが、それを笑顔でするとどうなんだろう?! ヘラヘラしてると思われてしまうのでは? と心配になり、その担当の方に伺いました。
そうしましたら、 「実は、入社してからみんなすごく出来がいい学生さんなのですが、中にはどうしても、お客さま、または上司・先輩とうまくコミュニケーションが取れない子がいるのですよ。
ところが、笑顔の子を採ると、それができてるんですよ。 だから最近は笑顔の子を採ったら間違いないんです」とはっきりおっしゃいました。
もちろんこれは一部の意見かもしれません。
ですが、そういうことを聞いて、 「男性も笑顔でニコッと笑って『失礼いたします」』と言って入って来い!」 と、今は言ってます。 今の学生さん、特に皆様のお子さんである学生さんは、 いいものをいっぱいお持ちなんですよ。
でも、それが表に出ない、「もったいないねー」っていつも言います。
ですから就職指導するときはその子の良さを引っ張り出すために一生懸命になります。 けれど、なかなか出てこない。
「マナーと一緒なんですよ」 マナーは心の問題です。心がとっても大事です。
学生の皆さんにね、「いいマナーの心持ってるよ」って、いつも言うんです。 「あなたのそのやさしい心、友達思いの心、友達が泣いてたらね、一緒に泣いてあげる、それ素晴らしいマナーの心だからね、十分持ってるのよ。 ところが、それが社会に通用するようにならないとダメなのよ。 マナーは心なんだけれど、ちゃんと相手に通用する形で表現して、初めて活きてくるし、あなたが救われる、幸せになれるのよ」とお伝えしているのです。
相手に通用する形 それが何かというと、言葉であり、表情であり、態度です。
私の授業では絶えず訓練です。 座るときに絶えず「失礼いたします」と言ってから座る。 授業の最初には「よろしくお願いいたします」と30度のお辞儀、 それから「どうぞおかけください」と私が言ってから座る。
最初は勝手に座りますから、 「立ってる私がいるのに何であなた方堂々と座ってるの? 『どうぞ』と言われてから座るべきでしょ」と言って座わらせない。
そして、「失礼いたします」と言って 「はいどうぞ」という感じで座らせてますから、 毎回それやっていると身についてくる、無意識のうちにできるようになるんです。 すると精神も育ち、やはりまわりを敬う心もできてくるんですよね。
最初は照れくさがっていた学生も、 「社会ではこうすべきだ」「こうしなきゃいけないんだ」「これがちゃんとお客様や目上の方に対する態度なんだ」ということをだんだんと理解していってくれます。
そこで、保護者様でいらっしゃる皆様方にお願いがあります。
当然、私が今申し上げたようなことをしてくださいとは申し上げません。 「挨拶ちゃんとしなさいよ」とか「ちゃんと目上の方には言葉遣いも気をつけなさいよ」なんて皆さんが言ったら絶対照れて「なんや、うっとうしい」「何言ってんねん」みたいな感じになりますし、親子の甘えもありますので、ですからそういう意味ではなかなか、聞いてもらえないのではないかと思います。
ですから、皆様方には、まず、皆様方から挨拶上手になっていただきたいのです。
やはり社会人になってちゃんと挨拶ができる、先程のように無意識のうちに 「失礼いたします」や「こんにちは」が出るのは身につかないとダメですよね。 それはやはり家庭からだと思います。
例えば、「行ってらっしゃい」や「お帰り」 「あなた、ちゃんとあいさつで『行ってきます』って言いなさい」 と言ってもダメです。
聞かない。 そうではなくて、見返りを望まないつもりで、ね。 見返りを望むと 「もうあなた、ちゃんと、わたしが『行ってらっしゃい』 って言ってるのに『行ってきます』ぐらい言いなさいよ!」 になってしまいますから。 そうなると、揉め事の原因になります。
とりあえず皆様方から、見返りを求めない。 基本的にあいさつはそういうものなのですよ。
「わたしがあなたに気をつけて行っといでね」って伝えたいから言うのです。
「ありがとう」って、そんな見返りを期待してるのではないですよね。
ですからとにかく、「気をつけてね、行ってらっしゃい!」 帰ってきたら、「ただいま」を言わなくても「お帰り」と言う。 その「お帰り」と言った時も顔を見ていただきたい。 表情を見る。 「あ、今日ちょっとしんどそうだな」 と思えばプラスアルファーの言葉をかける。 「どしたん、ちょっとしんどいの?」「なんかあった?」と聞くだけ。 そしたら「もう、いいねん、うざいわー」なんて言うかもしれない。
でも学生は、「どうせお母さんやお父さんに言ってもわからへんねん」みたいな気持ちもあったり、「格好悪いし、言わないほうがいいし、心配かけないほうがいいし」と、色々な、とてもやさしい心で思っています。
ですからそれを、「もう、わたしがちゃんと聞いてるのに答えない」と言うのではなくて、とにかく皆様は見返りを望まないで、どんどんどんどん皆様からあいさつ上手になっていく。
そうすると、これは以前あった話ですが、最初は照れくさいから黙って「んん~」と言ってた子が、だんだんだんだん、「うぇってきまーす」と独り言みたいなこと言い出して。 そしてもっと慣れてくると「行ってきまーす」と元気よくなったと。 成功、大成功ですよ。 これが社会人に一歩近づく方法だと思います。 社会人になってからもそうですが、 コミュニケーション能力を付けるためには何かというと、 一番の原点はあいさつなのです。
まずは自分から良い挨拶ができる。 「こんにちはー!」「おはようございます!」と挨拶する。 誰に?あなたに! これはとても重要なことです。 人間はみんな自己重要感というものを持ってます。 「わたし、ここにいるのよ。認めてよ」って思ってますよね。 それを認めること「あなたの存在」 まして笑顔で「こんにちは」と言えば、 「あっ、私に好感をもって心を開いてくださってるんだ」って思う。 喜ばない人はいませんよ。
そうしたら、「あ、おはよう」「こんにちは」「今日もよろしくね」 ってまた返ってきたりするでしょ。 心をお互い開いて、これがコミュニケーションのきっかけです。
そうすると、社会に出てからでも、コミュニケーション上手になっていける。 やはりポイントは、ここが一番大切なトコです。
これを是非、保護者の皆様方にも、お願いしたい。是非是非ね。 本人を動かすというのはなかなか子どもでもできないんです。 わたくしも長年やってるからよーくわかるんです。 言ったって余計聞きません、反発するだけ。 でも、自分が変われば相手は動くのです、おもしろいですよ。 ここなんです、マナーの真髄は。 そしてその努力は全部、自分に戻ってきますからね。
それでは、挨拶上手になるポイントを申し上げましょう。
挨拶上手になるポイント
ひとつめは、できるだけ名前を呼んでください。 もちろん、その状況にもよりますが、呼べるときは 「あ、鈴木さん、おはようございます」 「あ、斉藤さん、こんにちは、お世話になってます」 私も「田野さん、おはよう」って言われたら、とてもうれしいですよ。
しかも、田野はここには私しかいませんし、 「私の存在を認めてくださっているんだ!」と思うんです。
反対に無視されるほど悲しいものはないですね。
ですから、ぜひぜひ皆様方もまず、 名前をできるだけ呼ぶ癖をつけていただきたい。
それから、ふたつめはプラスのひと言をつける。 ただしこのプラスのひと言にはマイナスの言葉は言わないでください。
「田野さん、今日顔色悪いけど、どっか悪い?」 と言われたら、元気な私でも、ちょっと病気になりそうです。 「ひゃー、わたし元気やのに、なんか顔色悪いんやて」と思ってね。 ですから、マイナス言葉は言わないこと。
それから、もう一つのプラスは、 「おはよう」だけではなくて、もうひと言添えて欲しいプラスです。 ただ単に「おはよう」って、それも顔も見ないで、これでは社交辞令。 これだったら意味ないです。 そうではなくて、しっかりお顔を見て笑顔で! 「おはようございます。○○さん」 そしてひと言、「今日も良いお天気ね」だけでも良いのです。
ちょっとしたことですが、プラスの言葉をつけるだけで、 どれだけ人間関係が豊になっていくかということですね。
それから3つめは 「行動に言葉を 言葉に行動を」 行動に言葉を添える、いわゆる動いた時に言葉を添える。
そして、その言葉が出た時に、そのふさわしい行動は何かと考えていただく。 これも頭にインプットしていただいて、日常気遣っていただくと良いかなと思います。
例えば、通路があって、人がいらっしゃる、目上の方がいらっしゃって、細い通路です。 どうしてもそこを通らなければいけなかったら、黙って通ったら失礼です。
そんな時は「前を失礼いたします」とちょっと声をかけると良いですよね。 その声をかける時、その「前を失礼します」と言う時に、 どのような動きをしたらいいのだろうと考えていただく。
いくら大事な大事なお客さまであっても、 「前を失礼いたします」と深々とお辞儀をしていたら、 「邪魔やから、はよ通ってちょうだい」と言われますよね。
ですから、そういう時のふさわしい行動としては、 軽い会釈で、「前を失礼いたします」と速やかに通って、 前を通るとき、ちょっと、小腰かがめるとか、 何かふさわしい行動をしていただくということがいいのではないかと思いますね。
ですから、そういうふうに絶えず思ってやっていると 行動に言葉を、これで挨拶言葉が豊かになり、数多く言えるようになります。
先ほど申し上げたように、努力は全部、自分に戻ってくるんですよね。 親の背中を見て子どもたちは育つといいます。
皆さんのお子さんですから、立派な方ばかりだと思います。
でも、より立派になるためには、 社会人としてのマナーの形や表現方法を、まだまだご存じないです。 ですからちゃんとそれを 「相手に伝わる形にね、身に付けていかなあかんよ。あんたが損するよ。」 ということで、 やはり親御さんが見せてあげるということがとても大事だと思います。
ぜひぜひ、皆さんのほうでお気をつけいただきたいと思います。
トータルマナー株式会社では、ご依頼により、 ご希望のテーマで講演研修も可能です。 お気軽にお問い合わせください。